和尚歴遊(藤倉神社)

2010年1月9日 11:01 PM Filed under: 和尚歴遊 

秋田市郊外、太平山の麓。添川方面から西来院の御本寺(お寺でいうとこの本家)である補陀寺様を越え、仁別・太平山リゾートへ向かう途中の集落「藤倉」。近代文化遺産として国の重要文化財に指定されている藤倉水源地もここにある。また、西来院も初めはこの藤倉に補陀寺塔頭として創建され、藤倉は当院にとって浅からぬ因縁の地。

そしてこの地で1200年前から地域に信仰と集めているのが「藤倉神社」。杉の一枚板に書かれた縁起(下の画像・クリック拡大)によると、坂上田村麻呂が戦勝祈願した由緒、そして藤倉大権現と千手観音を奉ったことなどが記されている。

藤倉神社縁起

藤倉神社縁起

境内入口

境内入口

手前右が仁王堂  奥が本殿

手前右が仁王堂  奥が本殿

当院を藤倉から寺内へ移転・再興した久保田藩九代藩主佐竹義和公がこの神社の再興にも尽力していることにも、ただならぬ因縁を感じる。

永い年月この社を風雨から護ってきたであろう巨大な杉木立が冬の柔らかい太陽光を遮断する。薄暗い境内は一層神秘性を増す。

境内入り口には「藤倉観音  鉄心書」と。鉄心(鉄は旧字体)とは秋田県最古の禅寺であり当院の御本寺補陀寺四十六世鈴木鉄心老師(故人)のこと。師は秋田県曹洞宗史に残る名僧で、大本山総持寺において後堂という要職にまで就かれた方。
現在でも神社に千手観音を奉っているとういうことは、明治初期の神仏分離政策を免れたのだろうか?そのあたりは縁起には載ってない。
境内では力強い躯体の狛犬が出迎えてくれた。鳥居は木製で、無塗装のため木目がとても綺麗だ。
藤倉神社には本殿までの道のりにいくつかの神社が合祀されていた。目に付いたもので唐松神社・白峯神社・八幡神社・相染神社。
仁王像

仁王像

本殿手前には仁王堂が。仁王とは阿形・吽形二体の金剛力士のことで、仏教の守護者である。ここにあるということは神仏混存時代からの名残であろう。余談ではあるが、神社の狛犬も阿形吽形である。仁王像は寺院の門の左右にそれぞれ祀られるが、並んでいるのは珍しい。県内の仁王像の中では屈指の大きさらしく、藤倉神社再建前からのものらしい。縁起では再建は承応2年(1653年)となっているので、少なくとも350年以上前か。きつめの彩色なので古さは感じないが、東北の厳しい環境ではこのくらいゴテっとした彩色のほうが木地を護るのに適しているのかもしれない。
本殿

本殿

平成元年に改修された木造の本殿は、良い風合いに色が抜けている。建物の割りに大きい唐破風が印象的である。破風に佐竹家の家紋が入っていた。合祀してある千手観音を拝観したかったが、扉には錠がかかっていた。
しんしんと雪が降り、辺りは静寂に包まれるこの藤倉神社。雪がとけたらまた違った一面が見れそうだ。今度は春の大祭にお邪魔してみようかな。

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少林山 西来院 -曹洞宗- 〒011-0905 秋田市寺内神屋敷11-6 画像・文章の無断転載禁止 / by rinshoji.com