和尚歴遊(湯殿山注連寺)

2010年5月16日 9:31 PM Filed under: 和尚歴遊 

鶴岡市大綱の集落を大日坊と反対の方向へ進むこと数分。こちらも大日坊と同じく湯殿山の冠を持ち、弘法大師開創と伝えられる真言宗注連寺。

門前町があるわけでなく、地味な案内看板が街道に数ヶ所あるだけで、私もここへ来て初めて耳にする寺名であった。それだけに注連寺本堂を観たときは驚いた。

注連寺本堂

注連寺本堂

乾いた色が印象的な巨大な木造の本堂。そして巨大な鰐口。本堂を彩る彫刻は欄間・高梁・長押はおろか、破風を支える四本の柱や階段の手すりにまで及ぶ。非情に凝った造りの立派な本堂である。

柱彫刻は正面が龍。昇り龍と降り龍が二本ずつ正面に彫られている。残りの三面は寺紋の「桜」。なんとも可愛らしい。

寺紋の桜が彫刻された柱

寺紋の桜が彫刻された柱

この寺紋、そして寺名は注連寺が有するご神木「七五三掛桜(しめかけざくら)」に由来する。七五三=注連(しめ)ということだ。

七五三掛桜

七五三掛桜

かすみ桜という品種で咲き始めは白色だが、次第に桃色に変化するという。このとき(4月29日)はまだ桜の開花前。ようやく蕾が色づいた頃であった。

本堂内では寺庭婦人とおぼしき方が丁寧に拝観説明をしてくれた。残念ながら堂内は撮影禁止。

素晴しい天井絵と鉄門海上人の即身仏が私を迎えてくれる。ここの即身仏は大日坊と違い黒色である。

その昔は注連寺から先が湯殿山の結界とされていたため、出羽三山が女人禁制の時代は「女人のための湯殿山参詣所」として信仰を集め、大いに賑わったそうだ。明治時代に焼失した本堂は往時の寺勢の如く、今より大きく立派なものであったそうな。

神仏分離で神社に組み入れられた湯殿山であるが、まだこの地には確かに仏教が根付いている。


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