秋田から遠く離れた滋賀県。なぜ行ってみようと思い立ったか。それは比叡山へお参りしたかったから。旅程の都合上先に彦根観光を済ませたものの本来の目的はここにある「道元禅師得度の地(寂定坊跡)」を参拝すること。比叡山延暦寺は東塔・西塔・横川(よかわ)と三つの地域に分けられており、総本堂根本中堂や戒壇院などがある東塔が中心なのだが、曹洞宗の一僧侶としてはまず先に横川にある高祖道元禅師の霊跡に参拝しなければと思い、奥比叡ドライブウェイから入山した。
曇天模様の空の下、雨の心配をしているうちに横川に到着。駐車場には親切に高祖様の得度跡までの地図が書かれた看板が。
横川は比叡山の修行の場。高祖様や親鸞聖人・日蓮上人もかつてはここで修行なさった。朝も早く観光客一人いない。参道を歩くだけで身が引き締まる。
しばらく歩くと石垣の上に朱色に彩られた舞台造りの堂宇が見える。これが横川の中心となる「横川中堂」だ。
横川中堂はまだ拝観時間に至ってないようで人気がない。とはいえ拝観できても、一番に行くのは高祖様の元であるが。
砂利が敷かれただけの舗装されていない道を奥へと進む。路傍には三十三観音。先日読んだ小説「親鸞」には、親鸞聖人が毎夜この横川から京の都まで通う場面があったが、この道なのだろうか。
道の突き当たりにある朱塗りの鐘楼堂を左折すると「元三大師堂」がある。この堂宇はおみくじの元祖といわれ、比叡山中興の祖・元三慈恵大師の住房跡である。
整然とした小砂利の中心に直線に伸びた石畳。その先にある銅版瓦葺きの大師堂は左右向かい合うよう建てられた唐破風付きの堂宇と見事に調和している。中からは読経が聞こえ、外では修行僧らしき人が掃除をしている。高祖様の霊跡はこの下にある。
永平寺七十六世秦慧玉禅師が「道元禅師得度霊跡」と揮毫した石柱があり、そこから長い下り階段が。
じつはこの階段が比叡山をお参りした中で一番きつかった・・・
重い体に喝を入れ、ようやく高祖様の元へ。
風の音と鳥の声しかしない静寂の地。高祖道元禅師の仏弟子としてのスタートラインであるこの場所は、曹洞宗侶にとって間違いなくパワースポットであろう。自然と合掌をしてしまう、そんな力がこの場所にはある。
この横川は歴代祖師の修行の場であるが、今も天台宗僧侶達によって脈々と修行が続けられている。私は初めて比叡山を参拝し、その中で一番最初に訪れたのがこの横川であることを喜びに思う。
地域を一周し、横川中堂の内部拝観も終え、次は比叡山延暦寺の本坊、東塔へ向う。
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